去年の9月初旬の朝のことでした。
いつものように、JR山手駅から、私の通う盲学校まで、
車通りの少ない曲がりくねった坂道を登っている時でした。
突然目の前で、車のクラクションの音がしました。
エンジンらしき音も聴こえず、突然の事にひやっとし、
慌てて道の端に除けたら、私のすぐ横を、まるで蚊の鳴くような小さな機械音がすれ違っていきました。
私は、これを聴いて、「間違いなくハイブリッドカーだ」と思いました。
その音の小ささというのは、風もなく、周りの雑音もない、いわば静まり返った環境のなかで、耳を澄ましてやっと聴こえるぐらいのものでした。
非常に恐ろしいできごとでした。
私たち全盲の人間が一人歩きする時、音は、失われた視力の代わりをします。
車の動きも、エンジンから出るあの独特な音を頼りにしています。
所が、ハイブリッドカーでは、そのエンジン音はなく、
モーター音もかすかにしか聞こえないため、
私たちにとっては透明の車と言ってしまっても言い過ぎではないほど、
恐ろしいものとなっています。
音の聴こえかたは、周囲の状況、気象条件、
風の強さなどによっても変わり、
特に風の強い日は、強風によって耳が直接刺激され、
その音によって、小さな音がかき消されてしまい、
周囲の状況がわからなくなることもあります。
もし、音的に悪条件の中でハイブリッドカーに出会っていたら、
私たちはすぐに気付くことができず、非常に危険です。
今の所、ハイブリッドカーと視覚障害者との接触事故は
聞いた事はありませんが、
これからハイブリッドカーの台数は、確実に増えていくものと思われます。
そうなってきたときに困らないためにも、今から対策をねらないと、
大変なことになると思います。
そこで、ハイブリッドカーの走行音がどれほど小さいか、
一人でも多くの視覚障害者に体感してもらうため、
実際にハイブリッドカーに走ってもらって、
音を録音しました。
ぜひ、聴いてみていただけたら幸いです。
*ファイルの無断転載・転送は
堅くお断りでふ!!
《ハイブリッドカー》プリウス・走行音 聴く
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